いちべえ高瀬斉先生の日本酒講座14
7月22日(土)に荻窪いちべえに於いて漫画家で日本酒評論家の高瀬斉先生による日本酒講座に久しぶり参加しました。講座は現在第3クールに入っています。今回の講座は「ドブロク面白話」。講座の概要は次の通りです。参考資料は当日配布されたテキストです。
・1953年:酒税法制定・・・・アルコール分1%以上は酒お酒の製造規制
昔の農家は貧しく酒を買うお金が無かったので、自家製ドブロクを醸して冠婚葬祭等で呑んでいた。
・1868年(明治元年)・・・・財政難の明治政府は酒税の徴収を思いつき「酒造規則」5ヶ条を設ける。
・1871年(明治 4年)・・・・免許制度を採用(清酒10両,濁酒5両)
・1880年(明治13年)・・・・自家醸造は年1石以内と規制
・1882年(明治15年)・・・・自家醸造に対しても課税、免許鑑札料80銭
・1899年(明治32年)・・・・自家醸造の禁止令発効し、密造摘発、ドブロク狩りが急速に展開される。
罰金を納める金が無く、代わりに進んで刑務所に行き懲役により代償。自家醸造に対する罰金は換刑処分にする時は1日に1円、罰金30円だと30日間の懲役に服すれば出てこられた。大正4年当時の米の値段が2俵で13円だから30円は結構きつく、百姓がおいそれと納められる額ではなかった。「呑んだのは親爺だども、造ったのはおらだからおらを監獄さ入れてけろ。」と家族のお婆ちゃん達が監獄に入り、時には女囚が多かったという。
「お金は一銭も出さず、お上の飯食ってくる。」
・1908年(明治41年)・・・・監獄志願が絶えないので刑法を改正、1日1円から30~50銭へ職業収入の状況によって変えたが、懲役志願は減らなかった。東北北部、特に秋田県では密造取締りに熱心だった。→ドブロク王国
例 1908年(明治41年)密造違反者827人(女性516人),1917年(大正6年)2,217人(女性1,011人)ドブロク密造取締りには地域差があった。
・大曲税務署・・・・「酒類密造につき警告」
・仙台税務監督局・・・・農村に於ける唯一の慰安物、制止難き嗜好品と認めている。ドブロクの異名
濁酒 しろうま インペ(イ);隠蔽 沢の鶴;鶴の白さから? 大人ミルク コモカブリ すみません;澄みません 白露 藪(笹)の友;隠し場所? ...etc密造酒の隠し場所
小川に沈める 脱穀した後の稲藁を積んだ「わらみお」の中 積んだ薪の後ろ 田圃の小屋 杉林の中 山中 厩の床に穴を掘って ...etc酒調べ(酒税官) = 「カラス」
→詰め襟に黒マントを着て最新流行の自転車に乗って税務署と農民の知恵比べ(大正~昭和初期の実話)
・罰金の代わりに監獄へ
・チャールストン;ちゃー(親爺)がルス(留守)でトン(豚)小屋に隠す
・有線放送に「お富さん」が流たら酒税官が来たという合図。
・運動会・・・・来賓(役人さん,警察署長等)にもドブロクを振る舞う。
・水を被った酒税官・・・・流しに捨てられた醪を取ろうとしたら頭から水をかけられ、醪はすべて流されてしまった。
・天皇が守った濁酒・・・・学校で密造、天皇のご真影が飾ってある場所に隠す。
→酒税官もそこまでは探さなかった。
・鯉の酔っぱらい・・・・池に慌てて隠したら瓶が割れ、池の鯉がドブロクを呑み酔っぱらって暴れた。
・白くたって・・・・白い液体が入っている瓶を持って逃げた人を捕まえたが、中は磨ぎ汁だった。その間にドブロクを他所に隠す。
等々ドブロク特区
特区の申請により、現在各地でドブロクの製造が認められている。
遠野市(岩手県) 飯豊町(山形県) 飯田市(長野県) 鳴子市(宮城県) 新潟県で8カ所ドブロク祭
伊勢神宮,出雲大社など40数ヶ所で製造認可
長草天神社(愛知県) 白川郷(岐阜県) 白鬚田原神社(大分県) 来宮神社(静岡県) 宇賀神社(香川県) 春日神社(茨城県) 等
以上のような内容です。ドブロクとは発酵した醪を濾さない白く濁った酒のことなのです。昔、貧しかった農民は冠婚葬祭や年始などの特別な時に呑むドブロクが唯一の大人の嗜好品だったのですから、それを規制されたらたまんないですよね。ですから、農民達が酒税官の目から逃れるためにあの手この手で対抗していたようです。
講座の後は宴会です。今回は秋田県の蔵元、新政酒造(株)の佐藤さんがいらっしゃったので、お酒は新政を。大吟醸が冷やでもお燗でも旨みと香りのバランスが良く美味しかったです。
宴会のがお開きになった後は他所で引き続き呑み。10時頃まで呑んでました。
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