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2005/08/19

いちべえ高瀬斉先生の日本酒講座5

8月13日に荻窪いちべえに於いて漫画家で日本酒評論家の高瀬斉先生による日本酒講座第5回があり、それに参加しました。8月の講座は「酒屋万流」。日本酒の造りに必要な要素・工程のあれこれについてです。私は前回7月の講座はつまらん仕事の為欠席、2ヶ月振りに参加しました。よって、第4回の講座の転記は無しです。講座の概要は次の通りです。参考資料は当日配布されたテキストです。


アルコール発酵を営ませるものに、優秀な酒母,麹,蒸米が必要不可欠だが、それぞれ優秀なものを使っても必ずしも優秀な酒ができるわけでもない。そけぞれの酒造場との相性の良い酒母,麹,蒸米の組み合わせがあるもので、その組み合わせが妙を確立してこその優良酒である。それが「酒屋万流」である。

歴史上から見た造りのあれこれ
 ・室町時代:諸白造り,火入れ殺菌,三段仕込み,袋搾り
  ……現代の造りの原型,容器の拡大(10石木桶)
 ・江戸時代における柱焼酎と灘酒の突出
  ……宮水,水車精米,寒造り,水運の便
  柱焼酎……伊丹の酒で焼酎で加水,腐造防止,アル添量は現在
          より少ない
 ・M9年:灘でサリチル酸防腐試験、サリチル酸はビールの防腐剤
 ・M39年:横型精米機導入 エンゲルバーグ社製
       (恐らく精麦orコーヒー用)
       佐竹製作所国産1号機(臼杵回転式自動精米機・石粉精
       米で55%まで) →賀茂鶴で採用
 ・M42年:蛇管式火入れ法
 ・明治時代における灘酒の解剖……製造法公開を法制化,それま
  では門外不出
 ・山廃酛(嘉儀金一郎・M42)
  速醸酛(酸馴養連醸酛・江田鎌治郎M43 当初は28~30℃と仕込
       み温度が高い 今は18~20℃)
 ・T8年頃:竪型精米機
 ・T12年頃:ホーロータンク……木香が無くなる、暫くは敢えて木香をつ
  ける工夫をしていた蔵もあり
 ・大正時代のダルコ(活性炭)の使用
  (T15年 新潟県「住乃井」「吉乃川」優等賞)
 ・昭和時代のアルコール添加
   S14年北支(千福工場・田中公一),S15年満州にて
   S17年本土において55の清酒醸造場で転化醸造試験
   S19年全国的に普及
 ・S23年:高温糖化酒母(甘酒速醸酒母) 糖化を急速にかつ効果的に
      行うと共に雑菌の淘汰をも意図した仕込み。高温(55~58℃)
      を5~8時間持続し糖化を行い約40℃まで急冷した後、乳酸を
      加えさらに冷却を続けて25℃近辺で酵母を添加し、後は速醸
      と同様に育てる。
 ・S24年:三倍増醸法(始まりはS18年満州)……三増酒
 ・S37年:固形酵母による酒母省略仕込
 ・S38年:薮田式自動醪搾り機
 ・S41年:泡無し酵母の実用化(T5:最初の発見記録),
   S36年:ハワイ、ホノルル酒造 二瓶孝夫
   S44年:協会7号酵母より分離実用化(秋山裕一他)
   ドレン添加による吟醸香の付与法
 ・S44年:酒造組合中央会、防腐剤サリチル酸使用自粛を打ち出す。
 ・S48年:防腐剤サリチル酸の禁止
 ・S59年:融米造り発表,H4年:商品化

造りにおれるあれこれ
 
  奈良時代……早生,晩生,もち,うるちの区別
  平安時代……「法師子」「千本子(ちもとこ)」などの栽培技術上の特
  性に着目した品種名も見られる。
  鎌倉時代……酒造用「こひすみ早稲」「しゃうかひけ」などの品種
 精米:委託精米と自家精米
  精米したお米を布袋に入れ湿度を高める(吸湿)。
  使用米の選別→真正精米(割れたりした米を取り除く)
  扁平精米:回転速度を低くして米の密度を高める
         =長軸を中心に回転(長時間)
 精米機
  振動緩衝材の使用,兵庫「白鷺の城」
  ……水車精米を開始(水車新築)
 洗米
  機械洗い,手作業による洗い(吟醸),ザル,メッシュの袋,試桶など
  を使う。
  ホースで精米所などから浸漬タンクまで水と一緒に米を送りながら洗
  米する方法など→洗米機の様に渦が無いので洗いとしては不十分
 浸漬
  浸漬タンクの工夫(水抜き),限定吸水
 蒸し
  昔は甑(こしき)の底の穴の上にこま(さる)を置き、上記を均等に分
  散させるための道具を使った。
  その形状は杜氏それぞれに独特なものがあり秘密にしていた。
  蒸しの方法として「抜駆け法」「一時置き法」がある。
  甑肌を嫌って甑の底に偽米を置くところや網を置く蔵も増えてきた。
  蒸し蒸気の温度は101~103℃
  S40年代に流布した短期蒸し理論の弊害
  →澱粉をα化するには15~20分で十分→実は蛋白変性が不完全
  近年は「和釜+バーナー」は少なくなり、ボイラーの蒸気を甑に吹き
  込む方法が主流。和釜にこだわる蔵もある。
 放冷
  放冷機の使用
  そのまま試桶などで麹室へ運び通路で冷ます(鉄砲)
  →汚染されないよう床より高くするなどの工夫有り(吟醸)
 製麹
  麹室の素材の違い……杉,ステンレス,ベニヤ板 他,
                 コンクリートの壁(沖縄・泰石酒造)
  麹蓋 箱 床 機械製麹   盛りの工夫→丸いわっぱ,半月型
  麹室での種麹散布……放冷機での散布
  換気,除湿の工夫(天の戸)  使用布の洗浄度で油臭の可能性
  黄麹が日本酒の主流
  白麹の使用……秋田「まんさくの花」 生酒用→老ねが出難い
  黒麹の使用……秋田「天の戸」 クエン酸が多い
  酵素の種類……αアミラーゼ(液化型),糖化酵素,
            酸性プロテアーゼ(蛋白分解酵素)
   酸性プロテアーゼ:米中の蛋白質を分解しアミノ酸やペプチード
   などの旨味成分を作る。多いと雑味の原因となる。
  近年の淡麗な酒質からするとアミラーゼが強くプロテアーゼの弱い
  麹造りをよしとする。
 出麹
  専用の部屋を持つ蔵が多い。
  地域により湿度が違うのでそれぞれの工夫がある。 
  →除湿機,換気扇,ストーブなど
  「由利正宗」 できた麹を冷蔵貯蔵
  (必要以上に老ねさせない、麹の菌糸の成長を止める)
 酵母
  蔵付き酵母,協会酵母,自家培養酵母,花酵母
  M28:サッカロミセス・サケ・ヤベ 矢部規矩冶(東大)
 酒母
  生酛系:生酛(櫂の形状の違い),秋田生酛,山廃酛(山卸廃止酛)
  速醸系:速醸酛,高温糖化酛(S15 広島で考案・アル添酒用)
  菩提酛:そやし水 ご飯(1)を浸漬水(9)を埋める。
  ギリ酛:手やま(手混ぜ)→汲み掛け(30cmほどの円筒の筒を酛に
  挿入し、円筒の中の物料に掘り出し中に溜まった液を柄杓で外の
  物料に振り掛ける)
  酛の匂い……硫化水素臭(屁の匂い)
 
  枝桶・添え桶(小型タンク)……初添と翌日の踊り(品温の降下を防ぎ
  十分に躍らせるため)⇔スッポン仕込
  木桶仕込みの復活,小型タンクを木桶に固執している蔵もある。
  麹歩合のこだわり:普通は20%、多いところで25% 
  ……「由利正宗」は17%
 仕込みタンク
  開放型と密閉型,三段仕込み、四段仕込み....
  櫂入れの有無:櫂入れをするとそこから雑菌が入る。(櫂は木製)
  「由利正宗」……櫂入れしない,無加水,無濾過→杜氏さんの主義
  タンク冷却:サーマルタンク,冷却水マット,氷,雪,蔵全体を冷蔵庫
         に(冷蔵蔵)
  広島「蓬莱鶴」……マンションの地下、超小仕込み
  液化仕込での吟醸(液化酵素の温度帯)
  →80~90℃(液化率99%),50℃(液化率60~70%)
 上槽
  江戸時代からの天秤式,油圧式槽,自動圧搾機(ヤブタ),遠心分離
  方式ヤブタ→搾り袋のカビ対策
  袋吊り(首吊り)方式:S33島根県・堀江修二,出品酒によく使われる
  斗瓶取り 板の囲いは黴が付きやすい? 斗瓶はチタン製も
  外材による着臭(消毒剤とかの臭い)
 火入れ
  瓶燗,蛇燗式,熱交換器
 貯蔵
  瓶貯蔵,タンク貯蔵,冷蔵貯蔵,トンネル貯蔵


以上の様な内容です。日本酒を造るのに必要な要素も様々ですが、その工程,道具についても色々とあります。酒蔵はその土地に適した材料,道具,方式で日本酒を造るのですから正に「酒屋万流」。味も蔵によって違いが出るのは当然かなと思いました。今回の話を聞いて、ピンと来ないところもありました。実際に見てみると判るのかな、酒蔵見学をしたくなりました。
  
講座の後は恒例の宴会。今回は奈良萬の東海林専務がいらっしゃって盛り上がりました。頂いたお酒は、
 ・夢心 大吟醸 斗瓶囲い
 ・奈良萬 特別純米おりがらみ
 ・奈良萬 純米 中取り
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どのお酒も私の好み味で美味しかったです。途中、フルネットの中野社長が来店。「生老ね酒」のいい例があるからと、カップ酒を2種持ち込み。品名は敢えて伏せますが、巷でよく売られている酒です。試飲すると、なるほど老ね香が鼻につきます。これを美味しいと言って呑む方もいらっしゃるのでしょうけど、果たしてこれがこのお酒の本来の味なのかどうか.....楽しくもいろいろと勉強させられる時間を過ごしました。
  

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