6月25日に荻窪いちべえに於いて漫画家で日本酒評論家の高瀬斉先生による日本酒講座第3回があり、それに参加しました。6月の講座は「酒造りの神秘、米・米麹,酵母」。日本酒の原料についてです。その概要は次の通りです。参考資料は当日配布されたテキストです。
米
飯米と酒造米の違い
1)千粒重の差 飯米約22g,酒造米26~28g 酒造米は粒が大きい
2)心白の有無 心白とは米粒の部分的に白が濃い箇所を言う。
大きさは酒造米によって30~90%の開き
3)軟質・溶解性 吸水のよさ、破精込みのよさ
4)低蛋白性 蛋白質はアミノ酸となり雑味のもと。
酒の味に影響を与える
アミノ酸・・・・天然に存在するアミノ酸は約20種
日本酒に一番多く含まれるのはアラニン(甘味と旨味)
普通酒に多いのはアルギニン(苦味)
特定名称酒に多いのはグルタミン酸(酸味,渋味)
他にアスパラギン酸(酸味)
アラニン,グルタミン酸の量のバランスが旨味、ふくらみ、
きれいさに関係し、グルタミン酸,アルギニン,アスパラギン酸
の量が後味に関わってくる。
日本酒の美味さに関わる雑味を「複雑味」とも言う。
酒造好適米を使用している蔵はおそらく2割程度。
酒造米への認識
平安時代(9~12C)米を主原料とした酒が風土に馴染んできた時代
早稲・晩稲・中稲の区別、栽培技術上の特性に注目した品種
鎌倉~室町時代(12~16C)
室町時代になると商品生産としての酒造りの本格化,諸白の出現
酒造米「こひすみ早稲」,「しゃうかひけ」→酒造米として認識される
江戸時代(17~19C) 酒質による地米と田舎米の使い分け
酛米や麹米は備前古米
掛米は秋田(甘口になりやすい),地米,備前新米等
酒所の灘では大粒で軟質の播州米(鳥井米・金谷米)
知多半島では阿久比米の栽培・・・・酒造りが盛んになる
江戸末期~明治中期 白玉,都,伊勢錦,雄町の出現
明治時代(19~20世紀) 化学の導入
※それまでは杜氏の勘で酒を醸していた
M14年 東大お抱え教授ウィリアム・アトキンソンによる蛋白成分の
分析。伊勢,肥後,美濃,播磨,尾張,備前,遠江の粳米が最上。
しかし、これまで通り杜氏の勘の方が美味い酒ができた。
M22年 徳野嘉七・・・・大粒で粘らない米が麹にしやすい
摂津,播州,明石,備前,高砂
M23年 榊原英吉・・・・酒造において米質の純良なるを確定しなくて
は駄目。酛米は摂州粟生米,播州谷米
M37年 山田穂,天神穂,雄町,八反(以上大粒米)、神力,愛国
などの軟質米が適している
M43年 鹿又 親・・・・「蒸しが容易で均等に蒸せる事、麹菌の破精
込みがよく糖化されやすく発酵が良く異臭味を与えない米」が麹にし
やすい
M44~45年 江田鎌治郎・・・・麹米は備前雄町がいい
大正時代(20世紀)
T5年より試験所の佐藤寿衛が中心となり全国の仕込み米を集め
分析と適正試験を行い、「酒造適米」の言葉が生まれる。
神力,愛国,亀の尾,坊主,雄町,秋田「両関」
T2年 第4回全国清酒品評会において「亀の尾」で優等賞受賞
昭和時代
S7年頃 「雄町」が抜群と言われる
戦時中は飯米不足もあり好適米の研究も中断する。
戦後S35年頃より研究再開、「酒造好適米」とは何ぞや?
S44年 食糧米の自主流通制度から酒造好適米は各県で
評価決定されることに。以来、好適米は全て大粒心白の品質が
指定されるようになる。
酒造好適米作付けベスト5
1)山田錦,2)五百万石,3)美山錦,4)雄町,5)兵庫夢錦
数年前は五百万石が1位、5位に兵庫北錦等
酒造に使われるお米の比率
麹米20~23%,酛7%,掛米70~73%
麹米比率 純米酒における酒税法上の数字は15%以上
比率は蔵により差がある
復刻米
戦前に使われていた品種を採用する蔵も出てきた。
亀の尾,愛国,神力(以上戦前の3大品種),渡船,強力,穀良都,
赤磐雄町など。粒が大きく穂の背が高い
戦前は酒蔵が米造りをしていのが当たり前だった。
今は殆どの蔵で米造りは行われていないが、米造りをする蔵も僅かだが有る。
戦前と戦後のお米の違い
過燐酸石灰の使用(倒伏防止)→米の硬質化→被糖化性が極度に
小さく酵母の栄養の蛋白や灰分が少ない
硬質化によるマイナス面
蒸しが困難,麹の破精込みが不良,蒸し米の溶解糖化が不良
酒母が早湧きする,醪の発行が不十分等
→S23,45,50年の腐造の原因か?
酒米は何故蒸すのか?
同じ醸造酒のビールは原料の麦を煮るが、日本酒のお米は蒸す形をと
る。煮てしまうと柔らかくなりすぎ、麹の酵素が働き過ぎて澱粉をいっ
ぺんに糖化してしまい、その甘さの強さに酵母が負けてしまう。
→濃糖圧迫
ビールは仕込み水の量が多いので甘さも薄くアルコール度も少ない。
「姫飯仕込み」はお米を煮て作る液化仕込み
一粒の籾からできるお酒の量(あくまでも計算上の話)
一粒の籾から6~10本の茎が生える→1本の茎から100~150粒
のお米が採れる→一粒の籾から約1000粒のお米が採れる。
1000粒の米の質量を27gとし、精米50%(吟醸酒)とした場合、
できるお酒は約30ml
一合=180mlのお酒を造るには6粒の籾が必要
平成17年酒造好適米の栽培状況
全国44道府県で84品種、のべ177品種栽培されているそうです。
東京都,鹿児島県,沖縄県では酒造好適米は栽培されていません。
未だ、米麹と酵母のお話が続くのですが、長くなりそうなのでまたこの次書きます。
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